2013年7月19日 17:09 | 秘書ログ
「成年後見人が付くと選挙権を失うとした公職選挙法の旧規定は、参政権を保障した憲法に違反する」として起こされた一連の訴訟は、7月18日の札幌地裁での和解により終結した。この和解は、5月27日に国会で「成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律案」が可決・成立し、成年後見制度を利用する約13万6400人が、この参議院選挙から投票できるようになっていたことからなされたものである。
ある政党が与党となって内閣を組織するとき、政党自体の動きは見えにくくなる。そのため、与党は、政府の追認機関に陥っていると誤解されることがある。しかし、自民党においては、常に政府に対して、党としての視点から強く応じるので、時には政府との亀裂を感じさせることさえあるが、その政治のダイナミズムこそが政策変更の舵を切る原動力といえる。
自民党では、東京地裁で本件に関する違憲判決が出された直後から、選挙制度調査会などで様々な議論を重ね、5月9日の会議で公職選挙法改正案の要綱を了承、党内手続きを経て、5月17日に野党と協力し議員立法として衆議院へ提出した。法案は、5月21日の衆議院本会議において全会一致で可決、続いて5月27日の参議院本会議においても全会一致で可決、成立した。裁判の原告が傍聴する中での採決は、鮮明に記憶に残っている。
自民党の会議では、家族が障害を抱える議員などから「そもそも成年後見制度の趣旨は、障害のある方々が財産の管理や契約などで不利益を被らないよう保護・支援することであり、人権を不当に制約することではない!」などの主張がなされた。公職選挙法を所管する総務省から、「本人の自由な意思をどのように担保するのか?」「トラブルをどう回避するのか?」という主に制度面からの懸念が示されたが、これらは、不正投票を防ぐよう、代理投票を行う補助者を投票管理者(市区町村の選挙管理委員会が有権者の中から選任)が投票所の事務に従事する者のうちから定めるなど、政治主導で解決が図られた。
行政の役割が、決められた政策を着実に遂行し、現行の制度を安定的に運営することだとしたら、政治の役割は、スピーディな政策決定や思い切った政策変更ということになる。それこそが政治の真骨頂であろう。テレビに映し出された選挙権を回復した方々の笑顔を見て、自民党での熱き議論を思い出した。〈秘書W〉