2015年3月30日 12:42 | 秘書ログ
葛西臨海水族園のクロマグロが原因不明の大量死により、残り1匹"最後のクロマグロ"となった。私は、この光景に日本の周辺海域のクロマグロを自ずと重ね合わせた。クロマグロの減少は水槽の中だけの話ではない。大海での話でもある。
3月9日の朝日新聞の天声人語でも紹介された、一般社団法人シーフードスマート代表理事の生田よしかつ氏の新著「あんなに大きかったホッケがなぜこんなに小さくなったのか」(通称:あなホケ)によると、日本の漁業は伝統的に、漁獲可能量制度(TAC)という国単位で総量を決める方法であるため、漁業者間での早い者勝ちとなり、それが乱獲を生んでいる。他方、ノルウェーなどは、個別割当制度(IQ)という漁業者の規模に応じて、10t、50tなど年間の漁獲量の上限を決める方法であるため、㎏当たりの単価が高い脂の乗った旬の成魚だけを獲ることになる結果、稚魚はとられず水産資源は持続可能になる。これを背景事情として、大きなホッケが育たず、小ぶりのホッケのみが居酒屋で提供されることになっているという。
平議員は、この現状を知ってもらうため、ポケットマネーで生田代表の著書を購入し、自民党所属の全国会議員406名に贈呈した。読後、「水産業を長く見てきた者として、まさに的を射た意見と感じました。未来の子どもたちの為に何としてでも魚を守っていきたいと思います」などとしたためられたお礼状、電話、メールが届くなどの反響が事務所に寄せられた。ちなみに、この手紙の主は、一部のマスコミから「ブラック企業」の経営者として叩かれたこともある議員だが、誰に対するアピールでもなく、このような文章を直筆で書かれたことに、報道で作られた虚像とのギャップを強く感じた。
実は、生田代表自身は、20年以上も前にこの問題に気付き、折に触れ啓発活動に取り組まれてきた。現に、平議員が司会の自民党動画サイト"カフェスタトーク月曜日"の第1回放映時(2011年12月12日)に、生田代表は、この問題について既に強く警鐘を鳴らしていた。
しかし、今その緊迫度はより深刻になった。壱岐市勝本町漁協のデータでは、同漁協において、平成23年度まで200トンを上回っていたマグロの漁獲量が平成26年度には23トンになるなど、ここ数年の漁獲量の減少は著しい。一因として、水産大手が産卵場に集まってくる親魚を一網打尽に獲ることが挙げられている。このため、我が国のTAC制度の下では、子を産む親魚そのものがいなくなり、再生産能力が絶たれるおそれ、つまり絶滅のおそれさえある。
これについて、水産庁の動きは鈍い。「壱岐市マグロ資源を考える会」の訴えに対し、長官は「検討する」という霞ヶ関では「何もやらない」とも解される回答のみだったとのこと。また、昨年開催された水産庁の「資源のあり方検討会」においても、効果的な対策にまで踏み込めなかった。とはいえ、行政が主導して政策の方向性を変えることは、過去の政策の妥当性を問われることになるので、構造的に難しい。ここにおいて、政治主導ということになるが、自民党も水産資源管理の検討を始めたものの、生田代表いわく、総論のみで個別具体的な検討に入り切れていない。
そこで、省庁横断の地方創生担当副大臣の平議員である。「地方創生の要は、一次産業の農業、漁業、林業の発展にある」として、「壱岐市マグロ資源を考える会」を3月23日のカフェスタトークのゲストに迎え、その次の日に早速、自身の下に、漁業活性化策についての検討会を立ち上げることについて石破大臣の了解をとった。今後、利害関係者である、水産庁、漁協、水産会社などの意見を聞いた上で具体策を詰めていく。あなホケ、あなクロマグロ、あなサバ、・・・。日本の漁業政策は一大転換期にさしかかっている。 〈秘書W〉