2019年8月 8日 17:55 | 秘書ログ
「それでは、会議を始めよう」でスタートした8月6日の平事務所ミーティング。テーブルの中央に陣取り第一声を発したのは、いつもとは異なって平議員自身ではなく、分身ロボットOriHime「タイラくん」であった。
OriHimeは、タブレット端末を用いてインターネット経由で操作する全長25cmの小型ロボットで、操縦者と離れた場所で顔や手を動かし会話ができる。視線入力装置を使えば手足を動かせない筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者が操作することも可能だ。冒頭の平事務所ミーティングでは、平議員が衆議院議員会館でタブレット端末を操作し、15kmほど離れた地元事務所でタイラくん(OriHime)が秘書とコミュニケーションをとった。
OriHime(のちにリース品を「タイラくん」と命名)が平事務所にやって来たのは、今年2月。導入理由は、議員活動、特に国会における質疑や採決で技術的に活用可能か確かめるためだ。出産などで登院できない国会議員の代わりに質問したり一票投じたり、海外にいる国務大臣の代わりに答弁したり、そのような想定のもとで操作性の検証を進める中、OriHimeの開発者であるオリィ研究所の吉藤代表から「切実な困りごと」が届く。
「OriHimeを使った分身ロボットカフェや受付など、様々な在宅の人達の働き方を研究する中、介護制度の問題に衝突した。重度障害の方が"仕事"を行う場合、働けるなら介護は必要ないという考えにより、制度上のヘルパーを利用できない。また、在宅就労中のヘルパー利用料は企業側が負担するルールのため、企業は障害者を雇うことに二の足を踏む」
平議員は、この問題を解決するため、6月18日、自民党の内閣第二部会(規制改革を所管、平将明 部会長)と厚生労働部会(要介護者の福祉と雇用政策を所管、小泉進次郎 部会長)の合同会議を開催し、吉藤代表からヒアリングを行うとともに、厚生労働省と意見交換を実施。その後、厚生労働省が論点整理を行い、7月の参議院選挙後の議論の再開を約し、選挙戦に突入した。
その参議院選挙で、れいわ新選組のALS患者ら2人が当選すると、即、参議院のバリアフリー化が進められる一方で、日々の登院の困難さからOriHimeの活用も注目され始めた。このように介護制度の議論が加速したことは喜ばしいが、政府与党で真摯に取り組み始めた経緯を見ると、れいわ新選組の代表がインタビューで「極端に言えば、2人が国会の場にいてくれるだけでいいと私は思っている」と2人の議員活動を軽視しているとも受け取れる発言をしたことに、政局化への不安を覚える。
ともあれ、自民党では、障害者の就労支援のプロジェクトチームを立ち上げ本格的に検討する予定だ。平議員は、この議論を主導するとともに、自民党内の会合でもOriHimeが活用できないか検証を進めることになるだろう。テクノロジーの進歩によって既存の制度が現実に合わなくなってきたとき、それを是正することは、平議員が取り組み続けているテーマだ。目指すゴールは、平議員が事務局長として1年以上前に取りまとめた2018年4月の自民党成長戦略の中で「未来技術をテコにした多様で包容力ある社会(Inclusive Society for Diversity by Innovation)」と記されている。この先見性もあり、今日もマスコミ各社の取材依頼が後を絶たない。 (秘書W)