2020年9月25日 18:50 | 秘書ログ
安倍総理が辞任を表明した8月28日以降、「レガシーなき幕切れ 安倍政権」などと批判的に報じられることもあったが、第二次以降の安倍内閣では、特定秘密保護法による関係国との情報連携の高度化、平和安保法制の整備(集団的自衛権の一部容認)による日米同盟の強化、テロ等準備罪の新設による組織犯罪対策の世界ネットワーク入りなどの功績がすぐに思い浮かんだ。また、経済財政諮問会議の復活による、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間が投資したくなる成長戦略(アベノミクス)を打ち出したことも忘れてはならない。
その後、自民党総裁選を経て、菅新内閣の組閣とともに平議員は内閣府副大臣を退いたが、平議員にしても、内閣府副大臣としての1年間の成果が退任に際してわざわざ報じられることもなく、むしろデジタルガバメント庁創設の話題で掻き消されつつある。記録に残らずに、人々の記憶にあったとしても、やがて忘れ去られてしまう。そこで、備忘録を残すことにした。
とはいえ、内閣府副大臣になると秘書官を始め内閣府職員による万全なサポート体制が敷かれ、政策秘書としての私が関わる部分がほぼないため、見聞した中で主なものを列挙するに留まる。
さて、昨年9月に内閣府副大臣に再任された平議員の担務は、防災、行政改革、科学技術・イノベーション政策、宇宙政策、IT政策、クールジャパン政策、女性活躍、健康・医療戦略など今回も幅広であった。天皇陛下による認証官任命式を終えると、台風15号、19号が上陸したため、新たな担務の防災に奔走する。その際、打ち出した新機軸が「防災×テクノロジー」だ。これは過去の秘書ログ「内閣府副大臣の仕事Part2 ~ 掛け合わせる政策」で取り上げた。
2月になって新型コロナウイルスが日本国内での広がりを見せると、IT担当として、内閣官房に省庁横断のテックチームを立ち上げ、その後、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の開発を主導した。基本コンセプトは、電話番号や位置情報等の個人情報を取得しないなどプライバシーへの配慮だ。さらに、アプリCOCOAのインストール自体も陽性者となった場合の陽性番号の登録も任意となっている。腰の重い厚生労働省に代わって導入を図り、基本コンセプトを示し、GoogleとAppleの参入による開発者の調整を行い、早期リリースを決定してきた。一連の流れについてはITmediaほか合同インタビューで詳しく解説されている。
科学技術イノベーションでは、骨太方針2020や統合イノベーション戦略2020に「世界に比肩するレベルの研究開発を行う大学等の共用施設やデータ連携基盤の整備、若手人材育成等を推進するため、(中略)世界に伍する規模のファンドを大学等の間で連携して創設(以下略)」を入れ込むなど、宿願とされてきた研究開発ファンドに道筋をつけた。ファンドの規模は、自民党成長戦略「ポストコロナの経済社会に向けた成長戦略」によると10兆円と見込まれている。
宇宙政策では、外交力の強化につなげたり、成長産業と目される宇宙分野への投資を促したりするため、6月に改訂された宇宙基本計画にSDGsの考え方を戦略的に取り入れた。なお、ESG投資、および企業がESG投資を得るための行動基準とも言えるSDGsは、今でこそ共通概念となったが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による国連責任投資原則の署名や、安倍総理による国連での日本としてコミットすることの発表に先立ち、平議員が自ら呼びかけ人となってESG投資の流れを作り出していたことも再確認しておきたい。
この他、行政改革、クールジャパン、女性活躍などの各会議体でビジョンをもとに省庁横断の政策を動かしたり、健康医療戦略などにおいて裏で汗をかいたりもしてきた。
一度書き始めるとキーボードを打つ手が止まらない。だが、繰り返しになるが、これらの業績は今後好意的に報じられることはないだろうし、記録にも記憶にも残らなくなる。だが、いつか振り返った時に、「平議員があの時に...」となるかもしれないので、せめて秘書としてこの場に列記することにした。〈秘書W〉