2023年10月18日 15:15 | 秘書ログ
10月から「年収の壁」対策がスタートした。
「年収の壁」とは、パートタイムで働いている配偶者が一定の年収を上回ると扶養家族から外れて、社会保険料を払わなければならないために働き控えを行うことを言う。
年収130万円を超えると被扶養者でなくなり、年金や医療の保険料を払わなければならない。また、従業員数101人以上の事業所に勤める短時間労働者は年収106万円以上等の要件を満たすと被用者保険加入の対象になり、保険料の負担が生じる。
この辺りの解説は、自民党HP「106万円・130万円の壁 どんな課題?何が論点?Q&A形式で解説します」が詳しい。
今回打ち出された対策「年収の壁・支援強化パッケージ」では、「106万円の壁」については、手取り収入を減らさない取り組みを実施する企業に対して、労働者1人当たり最大50万円を国が支給し、「130万円の壁」については、引き続き被扶養者認定を可能とした。
テレビでは、
「なぜ10月から?もっと早く始めてほしかった」「最低賃金が10月から上がるのにタイミングが悪い」
など街角の不満や不安の声が紹介されていた。
10月から最低賃金が上がることで、例年よりも早く「年収の壁」が到来することが予想される。このため、働き控えの先手を打とうと制度検討を重ねてきてのギリギリの時期だからこその導入だが、その解説は付け加えられない。
続いて、
「保険負担をしている人がいるのに不公平だ」「そもそも社会保障制度全体の改革が必要」
という専門家の声が紹介される。
岸田総理自身も公平性について言及しているし、政策の本筋としては確かにそうである。しかし、かねて「年収の壁」は課題とされながら改善できなかった。そこに、昨年10月の短時間労働者への被用者保険の拡大措置による働き控えとコロナ後の景気回復による人手不足が企業を直撃した。このため、今回の対応策は緊急避難的な経済対策の側面が強い。
これらの構造をマスコミが認識していないなら取材不足であるし、十分認識していながら、かつては「年収の壁」の存在を批判し、今は「年収の壁」対策を批判するなら、国民の不安を煽る拡声器に過ぎない。マスコミの本分とは何なのか。企業側が政府の意図通りに動くかについて懸念を示す報道もあるので、是非マスコミの後押しが欲しいものである。 (秘書W)