【秘書ログ】 「年収の壁」を打ち破れ③ ~ 省庁間の壁 ~

2023年10月18日 16:55 | 秘書ログ

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2月1日の衆議院予算委員会での平議員の主張に戻りたい。まだ本ログで取り上げていない部分について言葉を補いつつ要約して紹介する。また、委員会で使用した資料も掲載する。


「提案は、この年収の壁を超えて手取りがマイナスになってからプラスに戻るまでの部分を一時的に給付で補ったらどうなるかという話です。
試算すると、労働者側の社会保険料の補填に必要な国家予算は約6千億円、企業側も社会保険料を払いますので、社会保険料の歳入増は1.1兆円、ネットで6千億円近く社会保険財政は良くなる。
経済効果でいうと、試算の一番下の数字が総額2.9兆円、一番上は4.7兆円ぐらいGDPが増えます。更に言うと、所得が増えますので、消費税も増えると思います。
これは時限でよくて、これから時給が上がっていきますので、5年ぐらいやると、みんなもう向こう岸にたどり着いている、手取りがプラスになっている。例えば、5年の時限立法の間に抜本的な制度改革をするというやり方もあると思います。」

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国で一時的に給付するものの、その分が丸々戻ってくる上に、更にこれだけの経済効果もあるなら、やらない手はない。
ただ具体的な検討となると、省庁間の壁に阻まれる。税金は財務省、社会保険料は厚生労働省の管轄になるため、税金を投入して社会保険料を補うなど役所の垣根を超える制度改正は、役人だけの議論では進まない。そこで、政治の出番だ。
ただ政治とてノーアイデアで「何とかしろ」では役所の「できない」理屈に跳ね返される。具体的な解決策、この場合は税金による一時給付と将来的なプラスの見返りということまで示すと、それが政策論的に納得いかない役所は代替案を捻り出してくる。
実際に自民党新しい資本主義実行本部の会合では、既に103万円の所得税の壁について対応済みだった財務省は我が問題にあらずという姿勢で、結局、厚生労働省内の制度改正で課題解決に臨む形になった。とはいえ、最終的な制度設計はやはりプロ集団に頼る他ないだろう。


平議員の腹案はもとより、この度の政府の「年収の壁」支援強化パッケージは、人手不足に苦しむ企業にとっても、手取り収入を増やしたいパートタイム労働者にとっても、国の財政(税収・社会保険料)にとっても、三方よしの政策だが、誰かが強力に推し進めないと動かない。


もちろん政治家は色々な問題点を認識しながらも、進めなければいけない政策を進めている。公平性の観点からの根本的な制度変更の議論は、9月21日から厚生労働省の専門部会で始まっている。国の制度はもちろんのこと、会社の配偶者手当がもらえなくなることについても懸念を示し、見直しを謳っている。


やっても批判、やらなくても批判。業界団体のために動けば業界団体から称賛されるだろうが、世間一般のためではそれもない。それでも国のために汗をかく議員がいる。  (秘書W)

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