「日本は技術で勝ってビジネスで負ける」とは、自民党の日本経済再生本部で講師を務められたこともある産業競争力会議メンバー・坂根正弘コマツ会長の言葉だ。
コマツの業績は、リーマンショックの後も堅調であるが、要因は、高性能な無人建設機を作るだけでなく、それを売り込む環境を自ら整えたことにあるという。自社の無人建設機が世界中の鉱山で使われるようにするため、掘削インフラのシェア6割を占める会社を買収した。優れた製品を作ってもインフラと適合する規格を押さえなければ、他社に負けてしまうからだ。
産学連携推進機構の妹尾堅一郎理事長によると、アップル社もビジネスモデルに長けているとのこと。i-phoneは元々魅力的な製品ではあるが、守るべき核となる情報以外を無料公開することで、他社にソフト開発を競わせ、アップル社が何もしなくても商品価値が高められる構造にした。
一方で、電気自動車のバッテリーについて、日本は技術力、開発スピードともNo.1を誇り、これをもって世界の標準規格になれると信じているが、世界の自動車メーカーは1番でなくても、技術的に参入しやすいもの、共有しやすいものを選ぶ可能性もある。
LEDの規格争いにおいても、簡易に取り付けられ且つ安い製品でなく、安全性は高いが価格も高い製品に日本メーカーが走っていることに不安を覚えざるを得ない。
さて、ここで政治行政サイドができることは何か。この分野は企業活動に頼る部分であるためにその範囲は限られ、ビジネスモデル作りのバックアップやその広報・啓蒙に限られるというのが講師陣の話。
そこで気になったのが、前出の坂根会長が某テレビ番組に出演し、ビジネスモデルの重要性を訴えた際、内容を正しく理解していなかったキャスターが「選択と集中、思い切ったM&A(企業の合併・買収)が大切なんですね」と平たくまとめ、そのコーナーを終わらせたことだ。CM直前のカメラが坂根会長の不安げな顔を捉えたので申し添えるが、あくまで大切なのは、技術を活かすための仕組みをいかに作り出すかであり、日本が伝統的にモノづくりだけに励むなら、「日本は技術で勝ってビジネスで負ける」のである。
ビジネスをやったことがないので恐れ多いが、政治サイドからの広報活動終了。〈秘書W〉