今週、ある新聞紙面に「1992年に20%だった非正規雇用の割合は、2012年に35%まで増えた。会社が不況で支出を抑えるため、正規雇用で働いていた社員を非正規雇用におきかえたことが大きい。」との解説が掲載されていた。よく見聞する論法だが、果たして是か、それとも非か。
自民党の雇用問題調査会で示された非正規雇用労働者に関わるデータ(出典:総務省「労働力調査」)を見てみよう。但し、2000年より前は細かいデータを入手できなかったので、この点だけはご容赦いただきたい。
非正規雇用労働者は、2000年に1,273万人(雇用全体に占める割合は約26.0%)だったのが、2010年に同1,756万人(同約34.3%)と、確かに10年間で483万人の大幅な増加だった。そこで、詳しくデータを見ると、非正規雇用労働者のうち、55歳以上の高齢者が平成12年の294万人から平成22年の549万人と255万人増加し、増加数の半分以上を占めていることが分かる。これが意味するところは、非正規雇用労働者の増加とは、年金の支給開始年齢引き上げや高齢者の勤労意欲の向上などによる嘱託社員(定年後に採用される非正規雇用労働者)等の増加が主な要因ということだろう。
となると、当該新聞の解説は一体何を根拠に書かれたのか。巷間言われていることだから調べるのを怠ったのか。バックデータに当たってみようという発想をしなかったのか。立ち止まって自分の頭で考えてみなかったのか。このような姿勢が、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の臨床応用をめぐる誤報問題を引き起こしたのではなかろうか。
この話を取り上げたかったのは、これが"子供の学習コーナー"に掲載されており、子供に誤った先入観を与えてはならないと強く思ったからである。その紙面をよく見てみると「ご意見は取材班へ。」と小さく書いてある。すぐに連絡すべきだったかもしれないが、ネット時代到来につき、まずは自ら情報発信することにした。〈秘書W〉