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【秘書ログ】 イランの核兵器開発問題の報道に思う。

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2013年6月14日 21:10 | 秘書ログ
 核兵器には、主にウラン型とプルトニウム型がある。大まかに書くと、ウラン型は、ウランに占める核分裂性のウラン235を遠心分離機で90%以上に濃縮して製造する。プルトニウム型は、原子炉で生成した使用済み核燃料から核爆発に適したプルトニウム239を抽出して製造する。
 各種報道によると、イランのアラクで建設中の重水炉(原子炉の1種)に原子炉容器が設置されたということである。そして、某新聞によると、「重水炉が完成すれば、使用済み燃料から、核兵器に転用可能なプルトニウムの抽出が容易となる」とのことで、そもそもこの文章は、意味が分かりにくいのだが、内容としても理論的に不正確であり、核開発の流れ(核燃料サイクル)を分からずに書いている可能性がある。さらに、イランにおける核兵器開発問題の本質さえ分からずに書いているようにも見受けられる。
 まず理論面について、核燃料サイクルを知る者にとっては常識とも言えるが、重水炉で生成される使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すには、重水炉の他に"再処理施設"と呼ばれるプルトニウム抽出施設が必要である。したがって、再処理施設の存在こそがプルトニウム型核兵器の製造意図を表す決定的な証拠になりうる。
 次にイランにおける核兵器開発問題の本質について、核兵器開発は、原子力発電所用の核燃料製造などの平和利用目的を隠れ蓑に、その製造に着手することがポイントであり、ウラン型では、核燃料向けの濃縮率3~5%や医療用アイソトープ製造向けの濃縮率20%を超えて、兵器級の90%以上までウラン235を濃縮した場合が平和利用目的を超えた指標になる。プルトニウム型では、前述のとおり、再処理施設が建設された場合が同様の指標になる。
 公然情報によると、IAEA(国際原子力機関)もアメリカのISIS(科学国際安全保障研究所)など世界の名だたる研究機関も、イランにおいては、兵器級に濃縮されたウランや再処理施設をいまだ確認していない模様である。イランにおける核兵器開発は、確かに疑われるものの、まだ客観的には、平和利用目的の範囲内にとどまるため、この一線を超えて、核兵器開発に着手したという動かぬ証拠をつかむことが、核拡散を懸念する諸国の共通の関心事項となっている。
 記事にする場合は、ただ単にイラン側の発表等をそのまま書くのではなく、理論的な裏付けは勿論のこと、問題の本質や背景を読者に伝えるよう心掛けるべきである。〈秘書W〉
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