「北朝鮮・寧辺(ヨンビョン)の黒鉛減速炉が再稼動したことを米当局が確認した。同減速炉をめぐっては、『38ノース』が衛星写真の分析により、施設から白い蒸気が立ち昇っているのを確認していた」と某新聞が9月18日に報じた。
遡って2008年6月、北朝鮮・寧辺核施設で冷却塔の爆破が行われた。崩れ落ちるシーンが印象的だったが、冷却塔などの冷却設備は復旧がしやすいこと、当面必要なプルトニウムは既に抽出済みだったことなどから、"爆破ショー"に過ぎないと北朝鮮の歩み寄りを懐疑的に見る向きが強かった。他方で、北朝鮮が、冷却塔の爆破後の2009年5月(通算2回目)と2013年2月(通算3回目)に核実験を実施したことについては、核実験を行う分だけプルトニウム残量が減るので、核の脅威の低減という観点からは好ましいとする専門家もいた。しかし、黒鉛減速炉の再稼動が事実ならば、六か国協議等の状況にもよるが、今後北朝鮮が核実験を行うことなどにより、核弾頭の小型化や増産を推し進める恐れも出てくる。
北朝鮮の恫喝外交の手段としての核兵器とミサイルは、2つをセットで考えなくてはならない。大量破壊兵器である核兵器はその運搬手段であるミサイルがなければ直接の脅威とはならないし、ミサイルは核兵器が積まれていなければその脅威が減じられるからだ。では、北朝鮮の核兵器とミサイル開発は、それぞれどの程度進んでいるのか、最近の北朝鮮の動向や報道をもとに確認したい。核兵器については、3回目の核実験後、アメリカ国防情報局が「北朝鮮は弾道ミサイル(種類は特定せず)に搭載可能な核の小型化に成功した」と分析した(但し、その後アメリカ政府高官が相次いで否定している)。ミサイルについては、2012年12月の発射実験の成功により、射程が10,000km以上でアメリカ本土に到達可能な技術を有していることが明らかとなり、残るのは核弾頭を大気圏内へ再突入させる技術のみと指摘されている。
さて、ここで注意したいのが、これらは、あくまでアメリカ本土へ到達するミサイルと、それに搭載可能な核弾頭についての話であり、日本への脅威とは別の話ということである。対日本について、日本全土をほぼ射程に収めるノドンミサイルは、既に開発済みで200基以上保有していると言われており、核弾頭についても、韓国国防研究院の研究委員がノドンに搭載できる程度まで核弾頭を小型化したとの分析を発表している。つまり、日本に対しては、常にその刃が突き付けられているとも言えるのである。日本の外交防衛当局や情報機関は当然それらを念頭に交渉や対策に努めているので、むやみに危機感を煽る必要性も喧伝する必要性もないが、報道に付随し敢えて"この脅威"について書かせていただいた。〈秘書W〉