インターンのY・Mです。
いま、我が国の財政は、歳出が歳入を上回る状況が引き続いており厳しさが増す一方です。とりわけ、高齢化社会の到来で医療費など社会保障関係費は増え続けています。その増加の幅は毎年1兆円弱と言われており、財政上の観点から社会保障政策の転換が強く求められます。そこで私は年間を通じて、医療の質を落とすことなく医療財政を圧縮できる施策はないものか、あれば平代議士に提言し是非取り上げていただきたいと調べて参りました。その結果、医療費を大幅に減らすことができる「魔法のような政策」(平代議士が物事の本質をわかり易く説明する時に使うフレーズをお借りしました。)はなく、少しでも合理化できる部分を地道に省いていくことで、医療コストを減らしていくしかないとの結論に至りました。
現在、各病院は、診療行為をするたびに診療報酬明細書(以下、「レセプト」)を作成し、窓口での患者負担分を除いた額を健康保険組合から委託を受けた「審査支払機関」(社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会の2つの専門機関があります。)に請求しています。そして、これらの機関において、不正請求の防止や診断の実態を把握する観点から、年間およそ18億件(注1)のレセプトが審査されています。ところが、審査は、職員・医師といった専門家など、人の目によって複層的に行われているため、レセプト1枚あたり最高83.50円(注2)の審査手数料が発生しています。また、審査をする専門家は現役の医師などであり、本業以外に割り当てられた審査を行うのは、大きな負担となっているとの指摘もあります。
既に日本では、毎年つくられるレセプトの約9割が電子化されています。審査支払機関では、これらを活用してのコンピュータ審査を、全審査の5割ほどで実施していますが、記入ミスなど簡単なチェックだけで、その後、人の目が入ります。電子化の普及割合が9割であることに比べると、十分に活用されているとは言えません。他方、アメリカでは全審査の約7割でコンピュータ審査が導入されていると言われております。つまり、日本の審査は、コンピュータ化と人件費によってコストがかさむ仕組みと言えるのです。
この考えに対して、レセプトに記録されているのは、生身の人間についての診療記録であるため、コンピュータで機械的にその妥当性を判定できないとの意見もあります。ただ、疾病ごとに診療行為をデータベース化し妥当性を判定できるプログラムを構築するなど、コンピュータ審査の改良や精度の向上、審査にかかる人件費の合理化などを実施していけば、全レセプト審査料である約1,200億円(注3)は、十分圧縮の余地があると考えます。
国民生活から見れば、社会保障費の削減による負担軽減と社会保障の質とは、それぞれが両立しない、いわば二律背反の難しい関係ではあるものの、上述のような削減できる部分の合理化は当然進めていかなければなりません。私は、最もジニ係数(不平等あるいは格差を計るための尺度で、0=平等)の高い高齢者世代だけに負担が偏重せず、また若者や現役世代の負担能力を超えないように、社会保障による負担増は国民全体で分かち合うべきと考えます。だからこそ、それに見合う無駄のない社会保障制度であってほしいと強く願います。
(注1)規制改革会議第6回健康・医療WG厚生労働省提出資料①のp2より算出
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg/kenko/130731/item1_1.pdf#page=3
(注2)規制改革会議第6回健康・医療WG厚生労働省提出資料③のp36より引用
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/wg/kenko/130731/item1_3.pdf#page=26
(注3)注1及び注2の資料を参考に算出。