南シナ海で高まる軍事的脅威について、どれだけの日本人が正しい認識を有しているのだろうか。
シンガポールで開催されたアジア安全保障会議で、カーター米国防長官が、中国が南シナ海において急速かつ広範囲で進める岩礁埋め立てについて強く批判し、その後、オバマ米大統領もこの中国の動きを牽制した。一方の中国側は、人民解放軍の孫副参謀長が「批判に対して断固反対」と応酬するなど一歩も譲らない。
それでは、実際に南シナ海はどのような状況にあるのか。報道すべてを細かく追えているわけではないが、一般的には、中国が埋め立てを進めている岩礁等は1~2箇所程度で、アメリカ側が機先を制して発言しているように映る。しかし、事実としては、ここ2年という短期間に、少なくとも南シナ海の7か所で中国が埋め立て(軍事拠点)の新設を行い、1か所で軍事施設を増強していることが明らかとなっている。
新たに軍事拠点化が進んでいるのが、ジョンソン南礁、ガベン礁、ファイアリークロス礁(以上3礁
http://goo.gl/4qHDlM)、スビ礁、ミスチーフ礁(以上2礁
http://goo.gl/nIaT0t)、クアテロン礁、ヒューズ礁(以上2礁
http://goo.gl/3wqZ8c)で、軍事施設の増強が行われているのがウッディー島(
http://goo.gl/GbhQgV)。南シナ海に浮かぶ岩礁や島の中には、アメリカや旧ソ連の南シナ海における軍事的プレゼンスが低下した機会をとらえて、中国が占拠したものが数多くある。そして、まさに今、それらの軍事化が急速に進められている。
平議員はかつて自民党動画サイト" カフェスタ" (
https://www.taira-m.jp/2012/06/2.html)などで、南シナ海における過去の事例を挙げ、尖閣諸島が中国に占拠される危険性について言及したことがある。そして、今も毎日のように尖閣諸島沖の日本領海内に現れる中国の海警(艦船)と日本の海上保安庁の巡視船との神経戦が続いている。海警の動きについては、新聞等で報じられることが常態化してきたため、危機感が麻痺しかねないが、一度上陸されると実効支配され、そして、軍事要塞化される可能性が極めて高いことが、今回の南シナ海の事象から証明されたとも言えよう。
今国会における平和安全法制の審議に際し、民主党の議員からも南シナ海の現状について指摘があった。「我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していること」「抑止力を高めることの必要性」を南シナ海の状況1つ取り上げても否定することはできないのではないか。法律を整備するに当たっての法技術的な問題は勿論あるだろうが、世界の情勢の変化を直視しての危機感の共有と真摯な議論が大切なことは言うまでもない。 〈秘書W〉