平議員の地元・大田区の取り組みが全国的なニュースになっている。それは、大田区が、国家戦略特区の規制緩和メニューを活用して、外国人観光客向けの「民泊(個人宅や空き部屋に有料で宿泊すること)」を制度化する計画についてのことで、同計画は、10月20日の国家戦略特区諮問会議(総理が議長)において全国で初めて承認された。大田区は現在、本事業に関する区民の意見等を募っており、年内の条例制定、来年1月からの条例施行を目指している。
この大田区の動きの背景には、昨今の外国人観光客の増加により、大田区内の客室稼働率が91%(平成26年)に達している現状がある。大田区は、羽田空港を抱える日本の玄関口であるため、その需要を取り込むビジネスチャンスだけでなく、外国人観光客の宿泊をはじめとする様々なニーズに応える責務もあると言える。
さて、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」は、旅館業法の規制の下におかれる旅館業とされる。そして、この「営業」とは、「社会性をもって継続・反復されているもの」と定義される。そのため、民泊を提供するかたちが、海外で活発化しているように「宿泊させたい人と宿泊したい人をつなぐ仲介サイトに登録し、元々知らない人を宿泊させ、その後も同サイトへの登録を続ける」ときは、旅館業法の「営業」に当たるものと解される。
農林漁業体験や大きなイベント開催に伴う「民泊」は特例として既に認められているが、それ以外は本来、宿泊者名簿を備えたり衛生に必要な措置を講じたりするなどの安全面・衛生面に関する基準をクリアしなければならず、日本のホテル旅館業者は当然、法令を遵守した上でおもてなしを行っている。しかし、ネットを検索すれば、特例に該当しないはずの民泊が「家賃よりも稼げる」というニュースとして又は広告として日本にも溢れている。主務官庁の厚労省は、実態を把握した上での対応を検討しているが、結論は来年中という状況下にある。
今週発行の自民党の機関紙「自由民主」は、大田区長から民泊についてヒアリングした観光立国調査会の模様を掲載した。同会合には平議員らが出席したが、大田区は既存の旅館業者との調整も行った上で「外国人観光客に限り7日以上につき民泊を認める」方針を採るということもあり、その取り組みを参考にしたい議員からの質問が相次いだ。今後、党としても、特区内に限らない民泊全般の適正な運用に向けたルール作りを進めていく。
国家戦略特区は一般的に、岩盤規制に穴を空けるための仕掛けであるが、民泊については、特区制度を活かし条例を制定することで、適法化しようと試みるものでもあるので、規制の適正化とも言えよう。大田区は、違法性が疑われる民泊を既に区内で100件以上確認しているとのことで、今後どのように民泊を適法な流れに乗せていくのか、国会議員、ホテル旅館業者、民泊を望む人々、全ての期待が寄せられている。 〈秘書W〉