2月4日、ニュージーランドでTPP協定の署名式が行われた。しかし、そこには、担当大臣としてTPP交渉の中心的な役割を果たしてきた甘利明議員の姿はなかった。秘書による政治献金の私的流用の責任をとって、1週間前に大臣を辞任したからだ。
実は、ここに至るまでもTPP交渉に関わるキーパーソンは、幾度となく交代してきた。元々TPP交渉参加9カ国(現在は12か国)との事前協議を始めたのは、民主党の野田政権であったが、2012年末に自民党へ政権交代した後、安倍総理が日米首脳会談に臨み「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」ことで、交渉参加を決めた。
この間、反対派の勢いが強かった自民党内で推進派を導いたのは「環太平洋経済連携に関する研究会」の呼びかけ人だった川口順子議員と中村博彦議員であった。反対派が大規模な集会を開く一方で、この研究会は平将明議員や小泉進次郎議員をメンバーに連ねながらも、極めて少人数で理論的な検討を加え続けていた。そして、安倍総理のリーダーシップとTPP対策委員長の西川公也議員による説得で今日のTPP協定の確定に至った。しかし今、川口議員は政界を引退し、中村議員は他界している。
結果として、交渉前、関税全廃を前提にGDP押し上げ効果プラス3.2兆円と試算されたものが、それを大幅に上回るプラス14兆円という交渉結果を勝ち取った。さらに、2月2日の農林水産省の発表では、2015年の農林水産物の輸出額が過去最高を更新して7,452億円となっており、今後関税障壁が撤廃されれば、更なる輸出額増が期待される状況下にある。
現在、自民党では小泉進次郎議員が農林部会長に就任し、TPP対策を含む政府の「経済財政運営と改革の基本方針(通称:骨太方針)」への提言策定に向けたプロジェクトチーム会合を連日開催している。ここに小泉議員の要請もあり平議員も積極的に関わっている。平議員は、地方創生・国家戦略特区の担当副大臣として、日本全国で一次産業の可能性を見てきた。また、元青果市場の仲卸会社社長として農産物の流通の仕組みを熟知している。これから、日本農業は更なる成長産業化・輸出産業化に向けて動き出す。
キーパーソンが変わっても自民党では理念が生き続け、それを担える人材もいる。 〈秘書W〉