舛添要一東京都知事の政治資金問題で浮上したインテリジェンスの取り扱いについて記述したく筆をとった。
インテリジェンス(情報)とは、集められたインフォメーション(生データ)に分析を加え洗練させたものを言う。そして、このインテリジェンスは、国家の外交・安全保障などに関する政策立案や意思決定を行うために用いられ、これによって、各国は直面する危機を回避したり、交渉を有利に進めたりしている。
戦う前・交渉する前から彼我の能力を正確に把握し、さらに敵の出方が分かっていれば、百戦危うからず。敵の本心はなにか、弱点となる部分はないか、それらを探るため、敵のブレインやその周辺のキーパーソンに近づき、カネ、酒、女、功名心、ありとあらゆる手練手管を使って、相手を籠絡させる。このように、敵と味方の実情を熟知することの大切さは古来、格言にも登場している。
インテリジェンスの世界では、主要人物の人脈、その面会日時などは、喉から手が出るほど欲しい情報で、それらは厳格に管理されるべき性質のものとも言われる。そのような中、その国のトップの一日の動向をわざわざ詳らかにしているのは日本の新聞社くらいと聞いたことがある。実際に私も首相官邸に人を連れだって行くと、とたん「誰に会うのか」「どんな用件か」と官邸に詰めているマスコミに問い質される。
さて、舛添都知事の政治資金問題。確かに税金は、適切に使われなくてはならない。"第三者"である弁護士が指摘したように、千葉のスパホテルに滞在した主目的が家族との旅行であるならば、政治活動費として計上するのは不適切である。そのホテルで会談したとされる舛添都知事の政治活動に直結する出版社社長が、実際にはそこにいなかったとしたら言語道断だ。
しかし、支出した資金を返金する意向が示されたにも関わらず「出版社の社長名を明らかにせよ」という論調については疑問に思う。そして、今後も「政治家が誰に会っているのか明らかにせよ」という風潮が作られていくとしたら、強い抵抗感を覚える。それは、前述のインテリジェンスの世界からすると、他国と渡りあうことをあらかじめ放棄するようなもので、平和前提のいかにも日本的発想だからだ。
変に警戒しすぎているのかもしれないが、いわゆるカウンターインテリジェンス(防諜)の考え方も頭の片隅に置いておかないと、専守防衛の日本において国を危うくしかねない、ということをこの際に主張しておきたい。 〈秘書W〉