「共謀罪法案はテロ対策にならない」「ちゃんと全文読んだのか」「条文にテロとは一言も出てこない」「秘書さんもしっかり勉強して」
議員会館の国会議員事務所には、様々な団体・個人が日々陳情で訪れる。衆議院本会議で、組織的犯罪処罰法改正案、いわゆるテロ等準備罪処罰法案(一部では「共謀罪法案」と呼称)の採決が間近に迫った日、このようなご叱責を受けた。
本法案の国会提出前に、自民党で議論された結果、「テロを含む組織犯罪を未然に防止し,これと戦うための枠組みである国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を締結して,国民の生命・安全を守ることを明確にするため、『テロ』という文言を入れる」ことになったはずだが、結局入れなかったのか...? その後の結論をフォローできていなかったことを反省しつつ、後になって条文を確認すると「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」という文言が入っていた。陳情に来られた方々は誰から法案の誤った内容をインプットされたのか。
また、国連特別報告者のジョゼフ・カンナタチ氏が、本法案について「プライバシーや表現の自由を制約するおそれがある」とする公開書簡を安倍総理あてに送ったために、野党やマスコミは国際社会からも懸念を持たれているとした。しかし、そもそも日本政府はこの法案の英訳を作っていなかったので、外務省は「海外にて断片的に得た情報のみをもってこのような懸念を示すことは‥」と強く抗議した。
このような中、G7首脳会合(5/26~27)で、国連のグテーレス事務総長は「特別報告者は,国連とは別の個人の資格で活動しており,その主張は,必ずしも国連の総意を反映するものではない」と先の書簡を釈明した。また、同じG7の「テロ及び暴力的過激主義との闘いに関するG7タオルミーナ声明」第9項で、「テロ対策のため国際組織犯罪防止条約(TOC条約)を含む国際文書の実施のために協力を強化する」ことが決議されるなど国際社会でも賛同を得られた。だが、これらの事実はほとんど報じられなかった。
さて、この点において、平議員がパーソナリティを務める自民党動画番組"カフェスタ・トーク"の4月3日の放送において、元検事の山下貴司衆議院議員が分かりやすく解説されている。世界の187の国と地域が締結するTOC条約の抜け穴となっている日本の現状、テロ等準備罪が成立するための要件が厳しいことなど明解であった。そして、30分ほどの解説後、ニコニコ動画のアンケート機能を用いて「テロ等準備罪処罰法案が必要か」と尋ねると、「①必要だと思う;94.6%、②いらないと思う:3.6%、③どちらでもない:1.8%、④わからない:0.0%」という結果になった。番組来場者には固定的なファンが多いことを加味しても、丁寧な説明を受ければ必要と判断される傾向が見て取れる。
安倍総理は、国会閉会後の記者会見で、テロ等準備罪処罰法について「依然として国民の皆様の中に不安や懸念を持つ方がおられることは承知をしております」「これらの法律を実施していくに当たって、国会での御議論なども踏まえて、適正な運用に努めてまいります」と述べられた。不断に説明していくことは勿論のこと、正しい情報をダイレクトに伝えることも必要不可欠となっている。〈秘書W〉