では、「奨学金制度の充実」「教師の待遇の向上」のための資金をどうねん出するか。その方法の1つ目が義務教育課程終了後に当たる高校での一部授業料無償制度の見直し、2つ目が外国人向けの奨学金の是正、3つ目が教員の年功序列制の廃止である。
1つ目について。日本では現在、年収が910万円以下の世帯の高校授業料を無償化としている。では、年収910万円以下とは、具体的にどの程度の割合なのだろうか。厚生労働省の統計では、児童のいる世帯で年収900万円未満の所得層は74.3%となっているので、年収910万円以下の割合は更に高く、大方の世帯が該当していることが分かる。私はこの授業料無償制度については、負担増となる一部の世帯の反対を覚悟で、無償化される年収を下げるべきだと思っている。シンガポールでは、学校の授業料が日本と比べ高い代わりに、教師の質を上げるため、将来教師として働く人に特化した奨学金制度もあるので、このような目的別の運用を採用するとよい。
2つ目について。東京大学などが設けている外国人向けの奨学金は、海外の優秀な人材を呼び込むことが国内に良い影響を与えたり、大学ランキングの"International Students (留学生の割合)"という項目の指標をあげたりするなど良い面も多いので、いずれ実施すべきものとも言えよう。しかし、本当に優秀な人材を呼び込むことができているのかは疑問だ。というのも、私が卒業したマレーシアの高校の先輩で、日本側から学費・生活費などを全額支給してもらい、日本の地方国立大学に通っているマレーシア人がいるが、その先輩は、日本以外の国では全額奨学金をもらえるような成績ではなく、ただ単にお金がもらえるという理由で日本に進学したと聞いた。もちろんこれは一例でしかないが、海外では一般的に外国人の学費を数倍高くするなど国内生と差を付けているのに対し、日本では学費に差を設けていないので、既に外国人に優しい学費設定をしているということも指摘できる。
3つ目について。教員の年功序列制の給与をやめ、経験の有無に関わらず、生徒に勉強の面白さを教えることのできる教員の給与を上げ、そうでない教員の給与は据え置く。月並みであるが、生徒の先生に対する評価点の導入も真剣に考慮すべきだろう。
上記のことを実現させるためには、国家の教育の枠組みを変えなくてはならず、予算の問題だけでなく、権益がぶつかり合うなど多くの困難が待ち受けているだろう。しかし、教育の仕組みを根本的に変え、未来に向けて人材に投資をしなくては、日本の国力はどんどん下がっていくばかりだ。それを変えるには、誰かが未来を見据え、本当に日本国民のためとなる政治をしなくてはならない。そのような政治をするのは誰であってもよいが、早ければ早い方がよい。変化には、障害を乗り越えていく意志と熱意が必要だが、それを恐れることなく国を良くすることのできる政治家が日本にいなくてはならないと、私は思う。
(インターンM・I)